超高層ビルなどの屋上や壁に雷が落ちてコンクリートの破片などが落下する被害が、少なくとも全国の10棟で起きていたことが、専門家などによる調査で初めて明らかになりました。被害が確認されたビルはすべて古い基準で建てられていて、国土交通省は、今後、必要な対策を検討することにしています。
落雷による超高層の建物への被害は、平成11年に東京都庁の庁舎で100メートルを超える高さから外壁が落ちたことがありますが、被害の報告義務はなく、これまでその実態は明らかになっていませんでした。
雷の専門家や技術者などで作る電気設備学会の委員会では、こうした被害がどれくらい起きているか、去年からことしにかけて建設会社への聞き取り調査などを初めて行いました。
その結果、東京都や大阪府、それに福岡県などの少なくとも10棟の超高層ビルなどで落雷によって屋上や外壁が壊れ、地上などに落下する被害が出ていたことが確認されました。
このうち、都心に建つ高さ200メートル近くの建物では、屋上のふちの部分が落雷によって壊れ、細かく砕けた破片が1階に落下していたということです。
落雷対策について、国は11年前に法律の基準を改正し、高さ20メートルを超える建物については原則として屋上や外壁などにも雷の対策を取るよう求めましたが、一方で、従来の古い基準でもよいという方針を示したため、現在も2つの基準が存在する形となっています。
調査した委員会によりますと、今回の調査で被害が確認された10棟はいずれも古い基準で建てられていて、中には基準の改正後に建設された建物も複数含まれていたということです。
調査を行った委員会のメンバーを務める静岡大学の横山茂客員教授は「落下したコンクリート片などが人にあたるおそれも十分にあり、国は新たな基準を守るべきだという意思を明確にする必要がある」と話しています。
一方、国土交通省建築指導課は「新しい基準は古い基準と設備の設置に関する考えが大きく異なるため、両方の基準を採用していた。今回明らかになった被害の状況を詳しく調べたうえで、必要な対策につなげられるよう検討していきたい」としています。
-- NHK NEWS WEB