第157回芥川賞と直木賞の選考会が今月19日、東京で開かれました。このうち芥川賞には、盛岡市在住の沼田真佑さんの小説「影裏」が選ばれました。この作品は、東日本大震災をきっかけに浮かび上がる人間の内面を抑えた表現で描いています。震災がテーマになった作品が芥川賞に選ばれるのは、今回が初めてです。作品がどのように生まれたのかを取材しました。
(盛岡放送局 渡邉真佑子キャスター)
作者の沼田真佑さんは、北海道小樽市出身で盛岡市在住の38歳。大学を卒業後、福岡市で塾の講師を務めながら小説を執筆してきました。
親の実家がある盛岡市に移り住んだのは震災の翌年、5年前です。
20代の頃から本格的に小説を書き始めましたが、デビューには至りませんでした。当時から書きためてきた「構想ノート」は10冊ほどに上るといいます。
今回の作品、「影裏」の舞台は岩手県です。盛岡市の会社に異動してきた男性が主人公で、元同僚で釣り仲間の“日浅”との交遊をみずみずしい自然を背景に描きました。
その人間関係に不穏な側面が浮かび上がってくるきっかけは、東日本大震災でした。
震災を軸に展開する物語ではありませんが、物語の後半、消息が途絶えた“日浅”の家族のもとを訪れた主人公が気付いてしまった、元同僚の危うい一面を読者に提示します。
-- NHK NEWS WEB