今年度の最低賃金の引き上げについて厚生労働省の審議会は、全国の平均で25円引き上げて時給848円とする目安を示しました。25円は、過去最大の上げ幅となった昨年度の実績と同じ金額。ネット上では歓迎の声がある一方で不満の声も上がっています。最低賃金の引き上げについて雇用問題に詳しい日本総研調査部の山田久理事に聞いてみました。
最低賃金の引き上げのニュースが流れるとネット上では「過去の引き上げ幅に比べると頑張っている」と歓迎する声が上がりました。また、「娘がアルバイトを始めて1年で時給が上がりました。人手不足もあるでしょうが、人件費に経費を割けるようになってきていると思う」として、収入のアップを実感しているという声も上がっていました。
これに対して、「たった25円?100円単位で上がってほしい」という声や「最低賃金1000円が普通にならなくちゃ…」といった声も。また「先進国ではぶっちぎりの最下位!」という指摘も出ていました。
一方、ネット上では、「都道府県単位で決まる理由が分からない。人はよい給与を求めて都会に出るだろうし、地方の過疎化が進むと思う」という声や「最低賃金の格差があるなら消費税も最低賃金に合わせて設定すればいい。都会のほうが賃金が高いのに消費税は同じだから田舎は衰退する」という意見なども見られました。
日本総研調査部の山田さんは「日本の最低賃金は、先進国の中で最低水準なので、ヨーロッパ並みに引き上げようという意見もある中では、まだ、今は道半ばと言える。しかし、中小企業への影響を考慮すると今回の引き上げ幅は妥当だと思う」と話しています。
また山田さんは、「地域によって、生活水準が異なるので、最低賃金の水準がすべて一律というわけにはいかない。しかし、格差は広がっていてこのままでは地方から人材が都市部に流出し、ますます地方が人材不足になってしまう。今後は最低賃金の水準が低い地域での引き上げペースを上げていく必要がある。これに合わせて中小企業の支援が必要で人材育成や企業どうしの連携などを自治体などが積極的にバックアップして生産性を上げる必要がある」と強調していました。
日本の景気回復には消費がカギとなります。消費を伸ばすには賃金の上昇は不可欠。今後も最低賃金の動きに注目していく必要がありそうです。
-- NHK NEWS WEB