企業が事業のもうけのうち配当や設備投資などに使わずに蓄えとして手元に残している「内部留保」が昨年度、初めて400兆円を超え、過去最高になりました。政府は内部留保を賃上げや設備投資に充てるよう促してきましたが、企業の慎重な姿勢が浮き彫りになりました。
これは、財務省が全国3万社余りの企業を調査して明らかになりました。それによりますと、企業が事業であげたもうけのうち配当や設備投資などに使わずに蓄えとして手元に残している「内部留保」は昨年度、406兆2348億円に達し、前の年度に比べて28兆円余り、率にして7.5%増えて過去最高となりました。企業の経常利益も昨年度、過去最高のおよそ75兆円に達し、もうけが内部留保として積み上がっている形です。
その一方で、企業がもうけをどれだけ賃金などに回しているかを示す「労働分配率」は5年前の72.6%から昨年度は67.5%に下がり、利益の伸びに比べ賃金の伸びが鈍いことを示す結果となりました。また、設備投資の額も前の年度に比べ0.7%の小幅な増加にとどまりました。
政府は、業績が好調な企業が賃上げを進めることで消費が盛り上がる「経済の好循環」を実現するため経済界に内部留保を賃上げや設備投資に回すよう促してきました。
しかし、企業はできるだけ内部の蓄えを増やしておこうと慎重な姿勢を続けていることが浮き彫りになり、今後、賃上げを求める声が一層強まることも予想されます。
-- NHK NEWS WEB