スーパーコンピューターをはるかにしのぐ性能が期待される次世代のコンピューター、「量子コンピューター」の初の国産機の開発に成功したと国立情報学研究所やNTTなどのチームが発表しました。複雑な組み合わせを解く問題でスーパーコンピューターの100倍のスピードを発揮したということで来週から世界中の研究者が利用できるようインターネット上で無料公開するということです。
量子コンピューターは、光の粒や電子など量子と呼ばれる極めて小さな物質の世界でおきる物理現象を応用した次世代のコンピューターです。
カナダのベンチャー企業が6年前、世界で初めて販売を始め、グーグルやIBM、マイクロソフトなどの大手IT企業も開発を進めるなど世界中でしれつな競争が展開されています。
初の国産量子コンピューターの開発に成功したと発表したのは、国立情報学研究所やNTT、それに東京大学など国のプロジェクトチームです。
従来のコンピューターでは、半導体の電圧で「0」か「1」の情報を表現し計算処理を行いますが、この量子コンピューターでは、全長1キロのループ状の光ファイバーに光の粒を大量に入れ、この光の粒が「0」であると同時に「1」でもあるという量子力学の特殊な物理現象「重ねあわせ」を応用することで超高速の計算を行います。
チームでは、送り込む光の粒を2000個にまで増やし計算能力を高めることに成功した結果、10の600乗以上という宇宙空間に存在するとされる観測可能な原子の数よりも多い組み合わせの中から最適な組み合わせを選ぶ問題をスーパーコンピューターの100倍のスピードで解くことに成功したということです。
この能力を使えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムで観客数万人が同時にスマートフォンなどの無線LANを使った場合近隣の基地局にどうつなげば混乱を起こさないかや、大都市の交通渋滞の解消、病気の原因となるたんぱく質に結合してその働きを抑える物質を膨大な数の化合物から探しだし画期的な新薬を開発することなどが期待できるということです。
プロジェクトチームによりますと国産の量子コンピューターの開発に成功したのはこれが初めてで、今月27日から世界の研究者が利用できるようインターネット上で公開し、利用方法を広げるためのソフトウエアの開発や性能の向上を目指すことにしています。
スタンフォード大学名誉教授の山本喜久プログラムマネージャーは、「今回公開する量子コンピューターの性能は現時点で世界最高峰だと自負している。世界に公開することで改善点や新たな利用法を見つけ出し、量子コンピューターを日本のお家芸としたい」と話しています。
-- NHK NEWS WEB