安倍総理大臣は15日、ロシアのプーチン大統領を地元の山口県に招いて首脳会談を行い、北方四島での共同経済活動について、特別な制度のもとで実施する方向で検討するとともに、元島民の自由な往来ができるよう調整を進めることで一致しました。一方、経済協力プランをめぐっては民間を含め、日本側が総額で3000億円規模となる経済協力を進めることで合意する見通しとなりました。
安倍総理大臣とロシアのプーチン大統領との日ロ首脳会談は初日の15日、安倍総理大臣の地元・山口県長門市の温泉旅館で行われました。
首脳会談は全体でおよそ5時間にわたって行われ、関係閣僚も交えた少人数による会談で、安倍総理大臣は「北朝鮮情勢をはじめ、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日ロ両国が率直な意見交換を行うことは重要だ」と述べました。そして、両首脳は両国の安全保障会議の間の対話や防衛交流を歓迎し、今後も継続することで一致しました。
また、安倍総理大臣がシリア情勢について「人道状況のさらなる悪化を強く懸念する」と述べ、ロシア側の対応を求めたのに対し、プーチン大統領は「地域の国々や、アメリカとも話し合いながら、解決に向けて努力する用意がある」と応じました。
さらに、安倍総理大臣は北朝鮮情勢について「国連安保理決議は厳格かつ全面的な履行が必要であり、ロシアと連携していきたい」と述べたのに対し、プーチン大統領は「北朝鮮に圧力をかけるとともに、6か国協議の対話の場に引き出すことが必要だ」と述べました。
また、安倍総理大臣が日本のミサイル防衛システムについて、「もっぱら防衛的なものであり、周辺国、地域に脅威を与えるものではない」と説明したのに対し、プーチン大統領はアメリカを中心としたミサイル防衛システムに対して懸念を示しました。
続いて、両首脳は通訳だけを同席させた会談を、1時間半余りにわたって行い、焦点となっていた北方四島での共同経済活動について、特別な制度の下で実施する方向で検討するとともに、北方領土への元島民の自由な往来ができるよう調整を進める方向で一致しました。
安倍総理大臣は「これまでのソチ、ウラジオストク、リマでの議論を踏まえて、元島民の故郷への自由訪問、四島における日ロ両国の特別な制度の下での共同経済活動、そして平和条約の問題について率直かつ非常に突っ込んだ議論を行うことができた」と述べました。
両首脳は、このあと出席者を拡大して夕食を取りながら会談し、8項目の経済協力プランについて、それぞれ調整の進捗(しんちょく)状況を報告したほか、16日、企業側の代表も交えて議論し、具体的な成果を発表することを確認しました。
また、訪問の記念品として、安倍総理大臣が日本とロシアが国交を樹立した「日魯通好条約」交渉の際の友好のエピソードを描いた絵巻物の複製を贈ったのに対し、プーチン大統領からはモスクワ市内の風景を描いた油絵などが贈られました。
安倍総理大臣は16日午前に長門市を出発して東京に戻り、午後から日ロ双方の関係閣僚のほか、企業関係者らも交え、昼食を取りながら、2日目の首脳会談を行うことにしています。
この中では8項目の経済協力プランをめぐって、政府間や企業間で、これまでに合意できた内容を確認することにしています。これまでの調整で、政府間では厚生労働省とロシア保健省による医療・保健分野での協力など13件のほか、企業間では東シベリアにおける共同炭鉱開発や、北極圏のLNG=天然ガス開発への融資など、60件余りの合意文書が取り交わされる見通しです。
政府関係者によりますと、民間を含めた日本側の経済協力は、総額で3000億円規模に上るということです。
-- NHK NEWS WEB