愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について、広島高等裁判所は「阿蘇山が噴火した場合の火砕流が原発に到達する可能性が小さいとは言えない」と指摘し、運転の停止を命じる仮処分の決定をしました。
福島第一原発の事故を受けて作られた、国の新たな規制基準では、原発の運転期間中に周辺の火山が噴火した場合、火砕流などが敷地に到達する可能性が十分に小さいことを証明するとともに、火山灰で非常用電源などが機能を失わないよう対策を求めています。
伊方原発3号機の原子力規制委員会の審査では、九州にある阿蘇カルデラが検討され、四国電力は、過去の噴火の周期や地下にたまったマグマの量の分析などから「運転期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分に低い」と説明し、規制委員会も了承しました。
これについて住民側は「規制基準の審査で用いられる火山ガイドは、噴火の時期や規模を相当前の時点で的確に予測できることを前提にしている点で不合理なことは明白だ」として、原発の安全性が確保されていないと主張しました。
これに対し四国電力は「火山ガイドは、原発の運用期間中に限定して火山の影響を評価するもので、噴火の時期や規模を的確に予想するものではなく、不合理だとは言えない」としたうえで、「阿蘇カルデラの過去の最大規模の噴火でも火砕流は敷地に到達しておらず、運用期間中に影響を及ぼす可能性は十分小さい」と反論しました。
また火山灰の影響をめぐっては、大分県にある九重山が噴火した場合に降る最大で厚さ15センチの火山灰が積もることが想定され、原子炉の冷却に使う非常用発電機にフィルターを設置することなどで、機能は維持されると説明し、規制委員会も了承しました。
これについて住民側は「審査での火山灰の濃度の想定は明らかに過小評価で、非常用発電機に火山灰が詰まって機能が喪失するおそれがある」と主張しました。
これに対し四国電力は「非常用発電機のフィルターは火山灰を吸い込みにくい構造で、仮にこうした発電機が機能を失っても、蒸気で動く冷却設備で原子炉を冷やすことができる」と反論しました。
今月、規制委員会は、火山ガイドを改訂し、電力会社が考慮すべき火山灰の濃度を引き上げることにしていて、四国電力は、非常用発電機のフィルターをより性能がよいものに取り替えるとしています。
-- NHK NEWS WEB