俳優のリリー・フランキーさんや佐々木希さんが出演して製作が進められていた、江戸時代の俳人、小林一茶の生涯を描く映画が、製作会社の経営破綻で公開のめどが立たなくなり、文化庁が所管する独立行政法人が助成金2200万円を返還するよう求めたことがわかりました。助成金が返還される見通しは立っておらず、専門家は、文化の振興を目的とした補助金や助成金が増加する中、チェック態勢を強化すべきだと指摘しています。
江戸時代の俳人、小林一茶の生涯を描いた映画「一茶」は、リリー・フランキーさんや佐々木希さんが出演し、ことし3月までに撮影を終えましたが、製作会社の資金繰りが悪化して経営破綻し、俳優などへの出演料も支払われなくなっています。
文化庁が所管する独立行政法人「日本芸術文化振興会」は、この映画の製作費として、東京・品川区の製作会社に助成金2200万円を支給していましたが、映画の公開のめどが立たなくなったことから、全額を返還するよう会社側に求めたことがわかりました。
製作会社の代表をしていた男性はNHKの取材に対し、「破産手続き中で語れることは何もない。映画を製作するためにいろいろなところから借り入れをしていた」としています。文化庁は「文化的価値が高いと考え助成金が支給されたが、映画が公開に至らず残念だ」としています。
この助成金は、文化庁が文化や芸術の振興のために予算化した補助金から支給されたもので、予算額は昨年度およそ100億円が計上され、10年余りで10倍に増加しています。
会計検査院OBで、日本大学総合科学研究所の有川博教授は「予算が拡張する中で、補助金を交付する行政側で審査や進捗(しんちょく)状況についてチェック態勢を整備すべきだ」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB