日ロ首脳会談にあわせて両国の企業の間では、8項目の経済協力プランに沿ってエネルギー分野を中心に当初の見込みの2倍近い68件のプロジェクトの覚書などが交わされました。
このうち、エネルギー分野では「サハリン2」と呼ばれる極東サハリンの天然ガス開発で大手商社の三井物産と三菱商事、それにロシアの政府系ガス会社ガスプロムがLNG=液化天然ガスの新しい製造プラントの建設に向けて協力することや、大手商社の丸紅などがロシアの国営石油会社ロスネフチとサハリン沖で天然ガスの探査や開発で協力すること、それに国の独立行政法人のJOGMEC=石油天然ガス・金属鉱物資源機構とロシアの石油会社が東シベリアでの天然ガスの探査で協力することなど、合わせて20件の覚書などが交わされました。8項目の経済協力プランのうち、エネルギー分野のプロジェクトが最も多くなっています。
また、極東地域の産業振興では、大手商社の双日などがハバロフスク空港のターミナルビルの運営事業に参入することで現地企業と合意したことや、北海道銀行が出資する北海道総合商事などが極東のサハ共和国で野菜の温室栽培事業を大幅に拡大する案件など合わせて14件の覚書などが交わされました。
医療・健康の分野では、大手商社の三井物産がロシアの製薬大手に出資したうえで医薬品の販路拡大などで提携することなど合わせて5件、先端技術の分野では大手電機メーカーの富士通がロシアのソフトウェア大手アビーなどとAI=人工知能を使った文書管理のシステム開発で協力することなど合わせて11件の覚書などが交わされました。
産業の多様化や生産性向上の分野では、日本の国際協力銀行がロシアの政府系ファンドとともに、日ロの合弁事業などに対して共同で投資を行う1000億円規模の枠組みを作ることなど12件の覚書などを交わしました。
このほか、都市づくりの分野では2件、中小企業の分野では1件、それに人的交流の分野では3件の覚書などがそれぞれ取り交わされました。
今回の日ロ首脳会談に向けて、政府は世耕ロシア経済分野協力担当大臣を中心に関係省庁が積極的に民間企業に働きかけて8項目の経済協力プランの具体化を進めてきました。しかし、欧米のロシアに対する厳しい経済制裁が続いていることなどを背景に、多くの日本企業はロシア企業への出資や共同事業への参加には慎重で、今回、政府の呼びかけに応じてひとまず覚書という形で協力関係を結び、具体的な事業計画や規模については検討課題とするケースが目立っています。
-- NHK NEWS WEB