漫画やアニメが無断でインターネットに公開された海賊版サイトについて、政府が閲覧者の接続を技術的に遮断するブロッキングを導入すべきだとする対策をまとめたことについて、法律の研究者や業界団体が緊急シンポジウムを開き、参加者からは法的な課題整理の必要性を訴える声が相次ぎました。
漫画やアニメなどをインターネットに無断で公開している海賊版サイトの被害が拡大する中、政府は、5万点以上の作品が掲載された「漫画村」など被害の大きい3つのサイトについて、閲覧者の接続を技術的に遮断するブロッキングの導入を緊急避難にあたる場合には行うべきだとしたほか、新たな海賊版サイトにブロッキングを行うため、官民の協議体を設置して適用基準などを検討することを明らかにしました。
これに対し、憲法やプライバシーなどの研究者でつくる団体やプロバイダーでつくる業界団体が22日、都内で緊急のシンポジウムを開きました。
シンポジウムには、プロバイダー関係者や法律の研究者、それに市民ら300人余りが集まり、対策の課題を議論しました。
この中で、刑法が専門の慶應大学の亀井源太郎教授は「プロバイダーなどの通信事業者が行うことになるブロッキングという行為は、通信の秘密を侵害し、そもそも違法行為にあたる。仮にプロバイダーが利用者などから訴えられて裁判になった場合、政府がブロッキングを容認したと主張しても認められるとは考えづらい。政府は違法性が阻却される緊急避難に位置づけられないかと考えているようだが、ほかの方法もあるように思え、緊急避難の条件を満たさないのではないか」と指摘しました。
また、インターネットの技術に詳しい立命館大学の上原哲太郎教授は「技術的には、ブロッキングの漏れや、逆に対象以外のサイトまで見られなくなってしまうケースも容易に起きる。また、コスト面やブロッキングをすり抜ける技術もあるため、実際に運用することは簡単ではない」と指摘しました。
一方、出版社の海賊版対策に詳しい村瀬拓男弁護士は「出版社は、海賊版サイトを検索サービスから削除するよう要請したり、“CDN”と呼ばれるコンテンツの配信を担う事業者への要請などの対策は進めているが、こうした対策ができる出版社は大手に限られる。早急な対策が必要なことは合意してもらえると思うので、ぜひ前向きな議論を進めてほしい」と実情を訴えていました。
会場からは「海賊版サイトの運営にはネット広告から資金が流れているので、広告主や代理店がどういうサイトに広告を表示しているか、きちんと把握するべきだ」といった指摘もありました。
海賊版サイトをめぐっては、政府が名指しして緊急の対策をすべきだとした3つのサイトは、22日の時点で、すべてアクセスできないか、コンテンツが閲覧できない状態になっています。
-- NHK NEWS WEB