薬を開発する際には、妊娠中の女性を対象にした安全性の試験はできないため、多くの薬は添付文書で妊婦の使用を禁止していますが、厚生労働省は一部の難病の治療に使われている3つの薬について、海外のデータなどで胎児に影響するという報告はないとして妊婦も使用できるように変更する方針を決めました。国はこうした検討をさらに続け、妊婦が使える薬を増やしていくことにしています。
薬の開発では、胎児に影響がでた場合を懸念して妊娠中の女性を対象にした安全性の試験ができないため、動物実験での結果をもとに多くの薬は添付文書で妊婦への投与を禁止されています。
そのため、こうした薬を服用している病気の女性の中には、本当に影響があるのかよくわからないまま、妊娠を諦めたり、妊娠中は薬の使用をやめて症状が悪化したりすることがあるとして、厚生労働省は、海外のデータや医師の判断で投与した国内のケースのデータを集める事業をおととしからはじめていました。
26日、厚生労働省で開かれた専門家会議では、いずれも免疫の働きを抑える作用があり、「こう原病」や「潰瘍性大腸炎」の治療、それに臓器移植の際に使われるタクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリンの3つの薬について、胎児の異常が増えたという報告はないとして、妊婦にも投与できるよう変更する方針を決めました。
厚生労働省は、速やかに製薬会社に対して添付文書を変更するよう通知を出すほか、別の薬についてもデータを集め、安全性が確認できしだい通知を出し、妊婦が使える薬を増やしていくことにしています。
この問題に取り組んできた成育医療研究センターの村島温子医師は「胎児への影響がある薬もあり、勝手に判断することは危険だが、リスクが否定できるものについては、今後も積極的にデータを集めて添付文書の変更を働きかけていきたい」と話していました。
-- NHK NEWS WEB