「東京物語」などの名作を手がけた日本映画の巨匠、小津安二郎監督が俳優の顔に手を伸ばしている写真が映画会社に残され、何をしているのか調べたところ、小津監督が独自の方法で涙や汗を表現していたことがわかりました。
「晩春」や「東京物語」などの作品で知られる小津安二郎監督は、「小津調」と呼ばれるローアングルの構図など独自の撮影手法や演出を確立し、今も国内外の映画監督に影響を与え続けている日本映画の巨匠です。
映画会社の「松竹」に残されている当時の撮影現場を写した写真の中に、小津監督が原節子さんや笠智衆さんなど俳優の目元に手を伸ばしている同じような写真が5枚あったことから、松竹が関係者に話を聞くなど調査を進めてきました。
その結果、撮影助手を務めていたカメラマンの証言などから、監督自身が綿棒を使って目元にワセリンを塗るという独自の方法で涙や汗の輝きを表現していたことがわかりました。
松竹によりますと、この方法は積極的に公にする必要がなく、撮影現場の外に広く知られることがなかったということです。
調査を担当したメディア事業部の関根美千代さんは「監督がみずから俳優にメークをしているとは想像もしていなかった。小津監督の映像に対するこだわりがよくわかる演出手法だ」と話しています。
-- NHK NEWS WEB