京都大学が岡山県に建設を進めてきた国内最大の天体望遠鏡が完成し、17日、報道陣に公開されました。各国がより大型の望遠鏡を開発し、共同で利用する形が主流な中、自前の設備で自由な研究環境を実現しようと、研究者がみずから部品を開発して作り上げた異例の望遠鏡です。
完成したのは、京都大学が岡山県浅口市と矢掛町にまたがる山の上に建設を進めてきた天体望遠鏡「せいめい」で、直径は3.8メートルと国内最大です。
天体観測をめぐっては、日本と欧米でおよそ1000億円をかけて、南米チリに建設した世界最大の電波望遠鏡「アルマ」をはじめ、より大型の望遠鏡を各国が建設、共同で利用する形が主流となっていますが、多くの研究者が使うため、割り当てられる観測時間が限定されるなど制約があるのが実情です。
このため、研究グループでは、より自由に観測できる環境を求め、限られた予算で高い性能の望遠鏡を作ろうと、部品をみずから開発しました。
望遠鏡の心臓部となる鏡は18枚の扇形の鏡が組み合わされていて、刀鍛冶で知られる岐阜県関市にベンチャー企業を設立して、地場の加工技術を生かしました。
また、鏡を載せる台座も複雑な計算に基づいてパイプを格子状に組むことで、軽いのにゆがまない構造を作り上げました。
こうした工夫で建設費はおよそ15億円と、同規模の望遠鏡の3分の1程度に抑えることに成功しました。資金は国の予算だけでは足りず、一部、賛同者からの寄付でまかなったということです。
研究グループでは、ブラックホールや超新星爆発など、宇宙の謎の解明につながる観測に取り組むほか、生命が存在する可能性がある惑星を探す観測にも挑戦したいとしていて、グループの京都大学、栗田光樹夫准教授は「予算が限られることで、みんなでアイデアを出し合い、シンプルながらも高性能なものがつくれた。身軽さを生かして、挑戦的な研究を行いたい」と話しています。
-- NHK NEWS WEB