太平洋戦争中、アメリカ軍に撃沈され、800人余りの民間人が犠牲になった客船「大洋丸」など、東シナ海の海底に沈んでいると見られる4隻の民間船を確認するため、専門家らのグループによる調査が始まりました。
調査を始めたのは九州工業大学の浦環特別教授らのグループで、24日午後9時ごろ、長崎県の女島の南西およそ170キロの東シナ海に到着し、ソナーを海中に降ろして深さ100メートル余りの海底の様子を調べ始めました。
確認を目指すのは4隻の民間の船です。このうち「大洋丸」はドイツ製の大型客船で、昭和17年に、東南アジアの占領地に商社などの企業の社員らを運ぶ途中、アメリカ軍の潜水艦に撃沈され、817人が犠牲になりました。船を所有していた日本郵船の記録などから、「大洋丸」は調査地点付近に沈んでいると見られています。
ソナーで船の存在が確認されれば無人の潜水機で撮影に挑む予定で、「大洋丸」のほか、昭和19年に旧陸軍の兵士らを運ぶ途中に撃沈され、2700人余りが死亡した「りま丸」と同じ年に撃沈されおよそ130人が死亡した「錫蘭(せいろん)丸」、そして、昭和18年に沈んだ「富生(ふせい)丸」の3隻の撮影も試みます。
太平洋戦争で撃沈された民間の船はおよそ2500隻とされ、漁船なども合わせると6万人を超える船員が犠牲になったほか、船員以外の民間人の死者もおよそ6万人に上るという記録がありますが、軍事上の秘密とされたことなどから、詳しい実態が明らかになっていないケースも多いといいます。
海底の調査は5日間程度行われる予定で、その後、映像の詳しい分析を行うということです。
浦特別教授は「遺族などの要請を受け調査することになった。全貌がほとんど知られていない悲劇の一端を伝える機会になれば」と話しています。
-- NHK NEWS WEB