「疲れ切ってくたくたでした」。50年連れ添った夫を亡くした妻の言葉です。お別れの通夜や葬儀、遺品の整理、その後の暮らし…ではありません。夫が亡くなった後、訪れた市役所での手続きに、ぐったり疲れたのです。愛する、大切な家族を失った…大変な時こそ、せめてやさしく寄り添ってほしい。そんな思いに応える新たな取り組み“おくやみコーナー”が注目されています。(松江放送局記者 川田侑彦)
大分県別府市。全国的な温泉地として知られるこの街の市役所が2年前に設けたのが“おくやみコーナー”です。さまざまな窓口が集まる市役所の地下1階。落ち着いた色合いの生け花とともに「おくやみコーナー」と書かれた案内表示があります。その奥にはパーティションで仕切られた4畳分ほどのスペースがあり、テーブルといすが並べられています。
おくやみコーナーは、家族が亡くなった時に役所で必要な手続きを、ここで『一元的に』受け付けてくれる新たな取り組みです。
実は、家族が死亡すると、役所で多くの手続きが必要になります。7日以内に死亡届を出し、2週間程度の間に以下の手続きも必要になります。
・国民健康保険被保険者証の返還
・後期高齢者医療被保険者証の返還
・介護保険被保険者証の返還
・葬祭費の請求
・軽自動車などの名義変更
・国民年金 厚生年金未支給請求
・身体障害者手帳などの返還
・世帯主変更届
・上下水道に関わる届けなど
一般的には、10前後の手続きが必要になります。多くの役所では、それぞれ窓口が分かれています。手続きごとに受け付け窓口を探し、ときに階段を上り下りして、同じような書類に故人の名前や住所などを記し続けなくてはなりません。
-- NHK NEWS WEB