「オレが若い頃は…」「オレは伝説の営業だった」日本の会社や組織に吹き荒れる「先輩風」。飲み会ではさらに風速が強まるようです。この「先輩風」をリアルに感じることができる、ある「モノ」が開発されました。
日本の飲み会を変えたいと登場した「先輩風壱号」。
イスの背もたれから、まるで千手観音の手が伸びるように、6つの扇風機が取り付けられています。
AIが搭載され、「オレが若かった頃は」「オレは伝説の営業だった」「いつかわかるよ」など、およそ2000の「先輩風ワード」に反応して扇風機が作動し、向かい合って座る相手に「先輩風」を吹きつけます。
さらに、先輩の声の大きさや話の長さも分析して、弱風・中風・強風の3段階の「先輩風」を吹かせるのです。
「先輩風壱号」を紹介する動画がネットで公開されると、およそ1か月間で170万回以上再生されました。
先輩風壱号を開発したのは、長野県のクラフトビールの製造会社「ヤッホーブルーイング」です。
ビールをみんなで楽しく飲んでもらうためには何が必要か、プロジェクトチームを立ち上げて検討を重ねました。
そして出した答えが、先輩と後輩の間に溝を作る、目に見えない先輩風を可視化することでした。
「先輩は自分が話しすぎていることに実は気づいていないのではないかと思います。そこを気付いてもらうことでみんなが楽しく飲み会ができるんじゃないかと思いました」(プロジェクトチームリーダー渡部翔一さん)
8月から都内のレストランに先輩風壱号を設置し、利用客に体験してもらうことにしました。
取材に行った日、飲食業界で働くアルバイトの人たちと、その先輩にあたる社員の男性が店を訪れました。
先輩は、早速「オレが若い頃は店が好きで、何十時間でも何百時間でも働きたかった」と仕事の心構えを熱く語り出しました。
すると、先輩風壱号が反応し、風が吹き始めました。
さらに「“オレらの時代は”だよ本当に。本当に変わった」「これやれよって先輩から言われたら当たり前だよね」などと、話が止まらなくなった先輩から先輩風が吹き荒れ、後輩の前髪も揺れ続けました。
参加した後輩からは「風が寒かったですね。なんか偉そうだなと思うようなところで、どんどん風が強くなるので、これが先輩風なんだと思い、自分は気をつけようと思いました」という声が聞かれました。
一方、先輩風を吹かせ続けた先輩は「気付かないうちに先輩風が吹くんだなと感じました。伝えたいことがあると熱くなってしまいますが、温度差もあるのでそこも考えながら話さなきゃいけない。ただ単にこちらからわっと言っても伝わらないのかなとこの風で感じました」と話していました。
先輩風を目に見える形にした先輩風壱号が、日本の飲み会を変えるきっかけとなるかもしれません。
-- NHK NEWS WEB