「やりがい搾取」などという批判が続いている東京オリンピック・パラリンピックのボランティアについて、専門家は「『ボランティアをすることは感動的だ』という、上から作られた物語に対して違和感を感じる人が多いためだ」と指摘したうえで、今後の研修や大会でボランティアの創意工夫が生かせるような運営が求められると指摘しています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックをめぐっては、ことし3月に募集要項案が公表されて以降、「やりがい搾取」や「動員だ」といった批判が、ネット上を中心に根強く続いています。
ボランティアに詳しい東京大学大学院教育学研究科の仁平典宏准教授によりますと、「やりがい搾取」は一定の専門性を持った人に無償で活動してもらおうとしていることなどへの批判で、「動員」はボランティアが本来自発的なものであるのに対し、文部科学省が全国の大学に対して学生の参加を促すよう通知したことや、企業が社員に役務提供を促していることへの批判だと解説します。
また、こうした批判の背景について、仁平准教授は「東日本大震災では、被災者を支援するという物語が共有されていたからこそ、こういう批判は起きなかった。今回は、オリンピックを東京で開く意義が共有されない中で、『ボランティアをすることは感動的だ』という、上から作られた物語に対して違和感を感じる人が多いためではないかと」と分析しています。
一方で、今回の募集については「ロンドン大会でも7万人に対して24万人の応募があった。ボランティアは経験を豊富にしたり、語学力などのスキルアップにもつながったりすることから、応募者は一定数いると見られ、こうした人たちまでも批判すべきではない」と強調しています。
そして今後に向けて大切なこととして、仁平准教授は「学生などが教育の一環として参加するものについては教育活動と位置づけ、ボランティアと呼ばないような実態に即した運営を行うことも検討すべきだ」としています。
またボランティアに応募した人たちについて、「単なる無償の労働力と捉えず、主体的なやりたい気持ちを尊重し、創意工夫が生かせる運営を行うことが大切だ」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB