企業の採用面接の解禁時期などを定めたいわゆる就活ルールについて、2021年春に入社する今の大学2年生の就職活動から「つくらない」と正式に決めた経団連の中西会長は、NHKの単独インタビューに応じ、その真意を語りました。思い切った決断の背景には、「人材」をめぐる危機感がありました。
この中で、中西会長は「根本は日本社会が多様な人材を求めていて、それに対して企業側の責任もあるし、大学側の責任もあるし、全体をうまくマネージしていく政府の責任ともども、ちょっと見直さないとダメではという問題意識が前々からあった」と述べ、採用面接などの時期に焦点を当てるのではなく、人材育成の在り方を含めた抜本的な議論が必要だという考えがルール廃止の背景にあると明らかにしました。
日本の多くの大企業では大学・大学院の卒業と同時に一斉に社員を採用する「新卒一括採用」が続いてきましたが、これについては「日本の人材がわりと均整で、均質的な文化の中でそれなりに激しい競争をするという仕組みが、もうグローバルな環境の中ではあまり有効ではなくなってきている」と述べ、見直しの必要があるという認識を示しました。
そのうえで「いろんな多様性ある人が集まってきて、いろんなものの見方をぶつけ合う中で、新しい会社の在り方や社会の在り方、そして自分たちのビジネスの在り方を考えることが非常に重要になってきている」と述べました。
そのため、求められるのは「語学」と「専門性」、多様な文化を理解できる「教養」の備えた人材だとしたうえで「もっと大学の教育それ自体に社会や企業も含めて非常に関心持って、世界に通じる人材を育成していという高らかな目標掲げて、努力してもらわないと。文系だろうと理系だろうと、最低限のリベラル・アーツ(一般教養)を勉強してこないと困る」と述べ大学教育の在り方にも一石を投じました。
中西会長は、こうして今後の日本経済を支える人材育成がどうあるべきかという観点から、採用の在り方のみならず大学教育も見直す必要があるという考えを示したうえで「ぜひ積極的に議論をふっかけていきたい。企業側に対しても姿勢をただして、メッセージを出していくことがわれわれの責務だと思う」と述べ、新たな成長戦略を検討する政府の未来投資会議で、議論をリードしていく姿勢を強調しました。
-- NHK NEWS WEB