自民党総裁選挙で安倍総理大臣が3選を決めたあと初めての臨時国会が召集され、安倍総理大臣は、衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、全世代型社会保障への改革をめぐり、65歳以上への継続雇用年齢の引き上げなどに取り組む考えを強調しました。また憲法改正について、政治的立場を超えた幅広い合意を得て国民と共に議論を深めたいとして重ねて意欲を示しました。
先の自民党総裁選挙で3選を決めたあと、初めての論戦の舞台となる臨時国会が召集され、安倍総理大臣は、衆参両院の本会議での所信表明演説の冒頭、ノーベル医学・生理学賞に選ばれた京都大学特別教授の本庶佑さんの功績に触れ、「世界的な偉業をもたらしたのは、これまでの『常識』にとらわれない全く新しいアプローチだった。私たちもまた、これまでの『常識』を打ち破らなければならない」と述べました。
そして6年前の政権交代の直後の所信表明演説で使った「『強い日本』を創るのは、他の誰でもありません。私たち自身だ」という言葉を引用し、「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる」と述べ、政権を奪還した当時の初心を堅持し、引き続き政権運営を担う考えを強調しました。
続いて安倍総理大臣は、一連の災害からの復旧・復興に向けた今年度の補正予算案の早期成立を目指すとともに、「若い人たちの意欲とアイデアで新しい農林水産業に挑戦できる農林水産新時代を切り拓く」などとして、地方創生を進める考えも強調しました。
そして政権の最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障への改革について、「これまでの働き方改革の上に生涯現役社会を目指し、65歳以上への継続雇用の引き上げや、中途採用・キャリア採用の拡大など、雇用制度改革に向けた検討を進める」と述べたうえで、今後3年間で、すべての世代が安心できる社会保障制度に改革していく考えを示しました。
また来年10月の消費税率の10%への引き上げについて、「引き上げが経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員することと併せ、来年10月から幼児教育を無償化し、再来年4月から真に必要な子どもたちへの高等教育を無償化する」と述べ、子どもたちや子育て世代に大胆に投資していく考えを示しました。
さらに安倍総理大臣は、「全国の中小・小規模事業者が深刻な人手不足に直面している」と指摘し、外国人材の受け入れ拡大に向けた、新たな在留資格を設ける法律の改正案の成立を目指す考えを示したうえで、出入国在留管理庁を設け、受け入れ企業の監督に万全を期すとともに、日本人と同等の報酬確保にも努める考えを表明しました。
一方、外交・安全保障政策をめぐって安倍総理大臣は、「北東アジアでは冷戦時代の構造がいまなお置き去りになっている。今こそ戦後日本外交の総決算を行う」と述べたうえで、まず北朝鮮への対応を取り上げ、相互不信の殻を破り、拉致・核・ミサイル問題を解決したうえで、国交正常化を目指す考えを示しました。
また北方領土問題を解決しロシアとの平和条約を締結することや、中国との間で首脳間の往来を重ね、両国の関係を新たな段階に押し上げる決意を示したほか、沖縄の基地負担の軽減で一つ一つ結果を出していく考えを強調しました。
そして安倍総理大臣は、憲法改正について「憲法審査会で政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく。そうした中から与党、野党といった政治的立場を超え、出来るだけ幅広い合意が得られると確信している。制定から70年以上を経た今、国民と共に議論を深め、私たち国会議員の責任を共に果たしていこうではないか」と述べ、重ねて意欲を示しました。
演説の締めくくりに安倍総理大臣は、「6年前、国民と共に政権奪還を成し遂げた時の初心、挑戦者としての気迫はいささかも変わるところではない。長さゆえの慢心はないかという国民の懸念にしっかりと向き合い、むしろその長さ、継続こそが力であると思ってもらえるよう、一層身を引き締めて政権運営にあたる決意だ」と述べました。
-- NHK NEWS WEB