国会では29日から、安倍総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まりました。29日の衆議院本会議で、立憲民主党の枝野代表が、外国人材の受け入れ拡大に向けた法律の改正案をめぐって、移民の受け入れ政策への転換ではないかとただしたのに対し、安倍総理大臣は、業種や期間も限られており指摘はあたらないと反論しました。
この中で、立憲民主党の枝野代表は、外国人材の受け入れ拡大に向けた法律の改正案をめぐって、「これまで安倍総理大臣自身が否定してきた移民受け入れ政策への転換とどう違うのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「政府としては、いわゆる移民政策をとることは考えていない。新たな受け入れ制度は、深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的・技術的分野における外国人の受け入れ制度を拡充し、真に必要な業種に限り、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を期限を付して受け入れようとするものだ」と述べました。
また、枝野氏が、森友学園をめぐる文書改ざん問題などをめぐり、「先の通常国会の閉会後、大島衆議院議長が談話を出し、政府に対し、経緯・原因を早急に究明することなどを強く求めている。議院内閣制の前提を揺るがした最高責任者として、どう答えるのか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「国民の信頼を揺るがす事態となってしまったことに対し、行政の長として大きな責任を痛感している。衆議院議長の指摘は重く受けとめ、真摯(しんし)な反省のうえに、再発の防止に向けて全力をあげていかなければならない」と述べました。
自民党の稲田筆頭副幹事長は、社会保障制度の全世代型への改革について、「『すべての世代が安心できる社会保障制度に向け、3年かけて大改革を行う』と言っているが、具体的な方向性はどのようなものか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「まず消費税の使いみちを見直し、子どもたちや子育て世代に大胆に投資するほか、70歳までの就業機会の確保などの雇用制度改革に向けて、来年夏までに実行計画を決定する。年金の受給開始年齢を自分で選択できる範囲を広げるなど、給付と負担のバランスもしっかり検討し、すべての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めていく」と述べました。
国民民主党の玉木代表は、日本とアメリカが交渉を始めることで合意したTAG=物品貿易協定について、「この協定を日米物品貿易協定と訳し、原文にはないTAGという略語までねつ造しているのは悪質だ。安倍総理大臣の『FTAにつながる交渉はやらない』という発言が虚偽答弁にならないようにするための苦肉の策だ」と批判しました。
これに対し、安倍総理大臣は「FTAについて、国際的に確立した定義が存在しないことは事実であり、ことばづかいの問題として今回の交渉がFTAの一種ではないかという意見があることは承知している」と述べました。そのうえで、安倍総理大臣は「今回、日米共同声明で、農林水産物について、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるという大前提を合意した点が最大のポイントであり、この前提のうえに今後も米国と交渉を行い、農林水産業を必ずや守っていく」と述べました。
また、安倍総理大臣は、中央省庁による障害者雇用の水増し問題について、「検証委員会からは、障害者雇用を促進する姿勢に欠けていたと、大変厳しい指摘を受けた。障害者雇用に関する基本方針に基づき、再発防止はもとより、法定雇用率の速やかな達成と、障害のある方が活躍できる場の拡大に向け、政府一体となって取り組んでいく」と述べました。
一方、安倍総理大臣は、日韓関係について、「さまざまな機会に、未来志向の日韓関係構築に向けて協力していくことを確認してきているにもかかわらず、韓国主催の国際観艦式における自衛艦旗掲揚の問題、韓国国会議員の竹島上陸など、それに逆行するような動きが続いていることは遺憾だ」と述べました。
また、安倍総理大臣は、先週行われた日中首脳会談について、「『競争から協調へ』、『隣国どうしとして互いに脅威とならない』、『自由で公正な貿易体制を発展させていく』という、これからの日中関係の道しるべとなる3つの原則を確認し、この原則のうえに、共に世界の平和と繁栄に建設的な役割を果たしていくことで一致した。首脳どうしの相互訪問を通じて、あらゆる分野の交流協力を推し進め、日中関係の新しい時代を切り開いていく」と述べました。
そして、安倍総理大臣は、憲法改正について、「すべての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任であり、国民のために命を賭して任務を遂行する隊員諸君の正当性を明文化し明確化することは国防の根幹に関わることだ。政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ね、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信している」と述べました。
-- NHK NEWS WEB