秋田の夏の風物詩、「ババヘラアイス」。年配の女性、すなわち「ババ」がヘラでアイスを盛ってくれるのでこう呼ばれています。この「ババヘラアイス」が今、東南アジアのカンボジアで貧困層の女性たちの生活改善に役立っています。
秋田県では夏になると、国道沿いやイベント会場などでカラフルなパラソルが見られます。
そこで売られているのが「ババヘラアイス」。アイスの製造会社が材料や屋台をすべて用意し、アイスを販売する女性には元手は一切必要ありません。
このババヘラアイスの販売をカンボジアの貧しい女性の支援につなげられないかと考えたのが、秋田県出身の報道カメラマン、高橋智史さんです。
カンボジアは年7%という経済成長を続ける一方で貧富の格差も拡大し、国民の3人に1人は貧困層という調査もあります。
高橋さんのアイデアにババヘラアイスを製造している男鹿市の会社が共感し、全面的に協力してくれました。
会社のメンバーがカンボジアに入り、アイスの作り方を貧困層の女性たちに指導。子どもでも買える値段にするため材料費は抑えつつ、おいしいアイスを作ろうと試行錯誤すること5か月、ようやくカンボジア版ババヘラアイスが完成しました。
現在、カンボジアでは5人の女性が日本のNGOが無償で貸し出している屋台つきの自転車でババヘラアイスを販売しています。
味はメロン味とイチゴ味。値段は10円ほどで、子どもたちに大人気です。
収入は完全歩合制で、缶に入ったアイスをすべて売り切れば1000円ほどになるといいます。
アイスを販売している1人、マット・チャントゥアンさん(43)は夫に先立たれ、育ち盛りの4人の子どもを1人で養っています。
チャントゥアンさんはより多くアイスを売ろうとチョコレートやシロップといったトッピングをつけるなど工夫を凝らしています。
元手がかからないためになんとか子どもたちを養っていけるようになったというチャントゥアンさん。「子どもたちにたくさん勉強してほしいので、懸命に頑張っています」と話していました。
海を渡った秋田のババヘラアイスが、貧困層の女性たちの小さな希望をはぐくんでいます。
-- NHK NEWS WEB