トランプ大統領の審判と位置づけられた今回の中間選挙の結果、上下両院が「ねじれ」状態になることで、アメリカの内政は一層混迷が深まることになりそうです。トランプ大統領としては予算案や法案の成立が難しくなり、議会との調整を余儀なくされます。
メキシコ国境の壁の建設や、オバマ前政権が導入した医療保険制度、いわゆるオバマケアの撤廃といった公約の実現が一層難しくなり、トランプ大統領にとって痛手となります。
ただ、トランプ大統領は10月、アメリカのメディアのインタビューで「私は候補者を助けているだけで選挙結果は、トランプ政権への人気投票ではない。仮に共和党が下院で敗北したとしても、自分のせいではない」と述べ、中間選挙の勝敗の責任は自分にはないという考えを示しています。
今後、議会との調整が行き詰まれば、外交や通商政策で強硬な姿勢に出てみずからの指導力をアピールしようとするとの見方もあります。
さらに2020年の大統領選挙を見据え、これまで以上に国内の支持基盤を意識して、アメリカ第一主義を一層鮮明にした政権運営をする可能性もあります。
一方、捜査が大詰めを迎えているとも伝えられている「ロシア疑惑」をめぐってはこれまでは上下両院で多数派を占める共和党が野党・民主党が求めるさまざまな調査の要求を突き返していましたが、今後はトランプ大統領の側近の公聴会への召喚が可能となり、トランプ大統領にとって不利な情報が明らかになる可能性もあります。
また、議会下院には「弾劾の訴追」を行う権限があるため、トランプ大統領の弾劾に向けた手続きが進む可能性もあります。
ただ、大統領を罷免するには上院の3分の2以上の賛成が必要なため、実際に罷免に至る可能性は低いとみられます。
一方、人事案を承認する権限を持つ上院で多数派を維持したことで、トランプ大統領としてはこれからの2年間で、連邦最高裁判所にさらに保守派の判事を指名するなどしてキリスト教福音派など、みずからの支持層にアピールする可能性もあります。
トランプ大統領が成果を強調する減税をもう一段、進めるためには、下院で多数派となる民主党から協力が得られるかどうかが、鍵になります。
選挙戦の終盤で、これまでの減税が大企業や富裕層優遇だという批判にこたえて、トランプ大統領は、中間所得層を対象に10%の減税を行う考えを示しました。
しかし、追加の減税に踏み切れば、財政赤字がさらに拡大するのは避けられず、議会にも懸念する声があるため実現には高いハードルがありそうです。
アメリカ経済は、GDP=国内総生産の成長率が2・四半期連続で3%を上回って好調ですが、中間選挙後のトランプ大統領の経済や通商政策が、アメリカ経済にどのような影響を与えるのか注目されています。
-- NHK NEWS WEB