認知症などで判断能力が衰えた高齢者が、犯罪グループに利用される事件が相次いでいることが、各地の警察や地域包括支援センターなどへの取材でわかりました。中には巨額の詐欺事件に関わったとして起訴された認知症の高齢者もいて、専門家は判断力が低下し始めた初期の認知症の人は、特に注意が必要だと指摘しています。
東京・港区赤坂にある1等地をめぐり、大手ホテルチェーン「アパグループ」が、およそ12億5000万円をだまし取られた事件では、去年、地面師グループのメンバーとされた9人が、詐欺などの罪で起訴されました。
このうち、地主になりすましたとして起訴された93歳の被告は、裁判所の鑑定で、「犯行当時から認知症が相当に進行していたと推察される」という医師の診断が出されていたことが、関係者への取材でわかりました。現在、裁判は中断しているということです。
この事件では、87歳の男性も地主になりすましたとして起訴され、ことし9月、執行猶予の付いた有罪判決が言い渡されましたが、現在、軽度の認知機能障害と診断されています。
地面師のグループは判断力が低下しているものの、受け答えが可能な高齢者を探して犯罪に引き込んだとみられています。
さらに、九州地方では80代の認知症の女性が、盗まれた預金通帳の持ち主として、銀行から金を引き出す「出し子」として利用され、逮捕されていたこともわかりました。女性は事情を知らなかったなどと判断され、不起訴となりました。
ほかにも、各地の地域包括支援センターに、認知症など判断力が衰えた高齢者が犯罪に利用されたケースに心当たりがあるか聞いたところ、10か所余りのセンターが「ある」と回答しています。
認知症の専門医は「認知症の初期の人は一見しっかりしているが、少し判断力が落ちていて、人の言うことを信じて聞いてしまう傾向がある」として、特に注意が必要だと指摘しています。
-- NHK NEWS WEB